『忘却』とは、忘れ去ることである。
人は『忘れる』という能力がなければ、絶望で生きていけないそうだ。
しかし、私にはそれらの忘れ物が大変愛おしく、また、そういった忘却の
中に存在する、私がかつて此処に存在していた証拠のかけらのようなものが、
どこか遠いところへでも散らばって、ある日ひょっと誰かのしゃっくりを止めたり
犬に遠ぼえをさせたりできないか、などと思うのである。
だから、私はこの日記を書くことにする。
この日記はその日にあった笑えることや、怒れることや、
その日に思い出した面白いことや悲しいことを記すためにある。どんどん忘れていくTwitterはコチラ
[link:1306] 2014年05月16日(金) 14:28
[link:1305] 2014年05月16日(金) 13:58
[link:1304] 2014年05月13日(火) 22:11
[link:1303] 2013年08月14日(水) 00:20
[link:1302] 2013年03月25日(月) 13:51
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なので、これからお引越をしようとする人への、具体的な指南のようなものにはもちろんならないし、参考にもなるとは思えません。
でも、お引越をするだけなのに、この人こんなにてんやわんやだったんだ!という記録をどこかに残しておこうと思い、この「忘れものはないね?」に書き留めます。
へーーーーーー、大変だったんだね、と笑ってもらえたら幸いです。
さて、大量のモノと、締切を前に立ち尽くすわたし。
でも、世の中にはこんなもんじゃない荷物の人もたーーーーくさんいるはず。
仕事をしながら引越もしなきゃ、という人もたーーーーくさんいるはず。
そしてその人たちも今日もどこかで元気にお引越しているはず。
と一生懸命自分に言い聞かせ、暇あるごとにとにかく捨てる、売る、実家に送り返す、など、おそらく誰もが引越の際には通るあろう道を順調に進みはじめたのでした。
一方、日々お会いする色々な方が、引越と聞いて、ご自分の体験談を聞かせてくれました。
その多くは引越屋さんに関することで、それも個人差のあることだから、そのすべてが独断といえば独断なのだけど、
「引越屋さんはほんとうにピンキリだから、よーーーーく選んだほうがいい。」
「◎○引越社はダメ。」
「△△引越社は高いけどとてもよい。」
「どこそこは安いけど最悪。」
「あそこは安くてよかったけど、荷造りとかいろいろはやってくれない。」
「結局、値段は人の代金。安いからって、役に立たないアルバイトが大量に来られると最悪。」
「すごいテキパキしてたけど、テキパキすぎて怒られた。」
「安ければいいってものではない。ある程度の値段で質を買うのも大事。」
など、どれもこれもためになりすぎて、納得できることばかり。
結局耳年増になるだけなって、よくわからなくなってしまいました。
よくわからなくなってしまったので、テキトーに、噂できくところの「最高ランク」、「フツー」、「最安ランク」の3種類で、各ランクの精鋭(?)と思われる引越屋さんを選び出し、A社、B社、C社に見積もりをとってもらうことに。
このうち、「最安ランク」のC社は、「とにかく省けるところはとことん省いている料金設定なので、訪問見積もりはやっていません、ネットで自分で入力して見積もりをとってください」ということで、それをする。
そうして出てきたC社の見積もりは、その安さには目を見張るものがあったけれど、ほんとうにこれでいけるのかどうか不安。あと荷造りのお手伝いなどは当然つかない。見積もりの時に入力もれがあると、それは持ってってくれない、または別料金発生。そしてなにより、引越当日の時間が前々日ぐらいにしかわからない。とのことで、おそらく安さと引き換えに、当日までドキドキして過ごすことになりそうでした。
そして残りの「最高ランク」のA社、「フツー」のB社は同日に時間差で来てもらい、見積もりを出してもらうことになりました。
見積もり当日、先に来てもらうことになったのはA社。ここは、噂で「かなり高いけど、仕事は本当に完璧。安心感も完璧。」と数人から聞いていたところでした。
来てくれた営業マンは、わりとイケイケな感じの30代男性。
荷物を見渡して、「こ、これは、大規模なお引越ですね。」と一言。
そして、とある金額を提示しました。さらに一部荷造りまで頼むとすると追加で5万〜9万ほどかかるとのこと。
驚きませんでした。
だってそこはもう高いって聞いてたから。高いけどその分すごくきっちりやってくれる、って聞いてたから。
それになにせ、引越は14年ぶりで、引越料金の相場がもうぜんぜんわからなくなっちゃってるし、たくさん聞いた情報も具体的な値段は結局わからないし、そんなもんか、と思い、素直に「へーーーー」とうなずきました。
すると営業マン、その「へーーーー」を、「高いな、と思ってるな」と解釈したらしいのです。
次の瞬間、いきなり「ボクでお役に立てること、なんかありますか?!」と決め台詞のようなセリフを言い放ったのです。
「え?」
セリフがなんかすごく芝居っぽかったのと、状況にたいして遠回しな発言すぎて、何を言ってるのか意味がわかりませんでした。
「○○さんにできることですか?」ちょっとおかしくて半笑いになりながら聞き返すと、「このお値段だと高いですか?ボクにできることありますか?」とまた同じことをいいます。
ああ、そういうことか。
これはつまりひょっとして、負けてほしい、という言葉を…..待っている?
もう完全に笑えてくるスイッチが入ってしまったのですが、せっかくなので言ってみました。
「これってもう少し安くしていただけるものなんですか?」と。
すると、待ってました、とばかりに、「いやーーーー、キビシイっすね〜〜!なんせこの量なんで、3トン車2台で、人は5〜6人必要です。積み込みは前日の夜中にやらないと当日テッペン越えますし。……でも、ぶっちゃけいくらだったらいいですか?」
キタ。やっぱり言ってほしかったんだ。
そこで、ああつまり、なんだかんだいって最初の値段は交渉ありきで出してるんだな〜、なんだかな〜、という気持ちになり、それならいっそ思いきった金額を言ってみようと思って約半額値段を言ってみた(ちなみにその値段は自力でやったC社のネット見積と同じ金額)。
すると……
「あ、さすがにそれは無理ですね。」とあっさりスルー。
なんだよ!ツンデレかよ!と思わず心の中でつっこみつつ、表向きには「はあ、そうですか〜、ですよね〜。あはは」とがっかりしていると、次の一手が来た。
「あのですね、この後、どこか他社さんが見積もりに来られる予定ですか?それ全部断っていただいて、この場で決めていただけるなら○万円(当初より5万ほど安い)でできるかどうか、今この場で上司に電話して交渉するんで。ちょっと待ってください。」
え?この場で上司に交渉?
返事もせずキョトンとしていると、彼はすぐさま携帯で上司に電話をかけ、うちの条件を話し、「この場で決めてもらうんでその値引き金額でやらせてほしい」と上司に頼み始めたのです。
電話のむこうでは「上司」がゴネている様子。
が、しばらくああでもない、こうでもない、とやり取りした後、得意げに電話を切った彼は、「オッケーです!いまここで決めていただければこの金額(最初より5万安い)でやらせていただきますんで、どうですか!」
わたし「はあ……。」
なんとなく、全体的に、すべてが若干「芝居」のような感じもしたのだけれど、つまり上司との芝居後に値引きされて出てきた値段が最初からのこの会社の値段なんだろうと解釈した。
いろいろなツッコミどころは置いておいて、ともかくもうしんどくなってきて(まだ1社来ただけだが彼のイキオイと小芝居でエネルギーをだいぶ吸い取られた)、決めてしまいたい。
「かなり値段は高いがその分頼んだ甲斐はある」「安ければいいってものもない」「ある程度の値段で質を買うのも.... 」などという情報が頭をめぐり、しかしその違いというのが具体的にどのくらいなのかがよくわからないので、いくらかの違いで仕事の内容がそんなにきちんとしているのならもういいや、と思い、契約をすることにしました。
そして勢いよくA社の営業マンが帰った10分後、今度はフツーランクB社の営業マン氏がいらした。
この後の訪問は断ってくれ、といわれたけれど、そんな急なキャンセルをする時間があるはずもなく、とにかく、お話だけは聞くことにした。
しかし、さきほど契約をしてしまった手前、この営業マン氏の営業は、いってしまえば虚無への供物。それを思うと胸が痛み、いっそここで帰ってもらったほうがいいのか、などと考え出し、気が揉める。
B社の方は落ち着いた50代ぐらいの男性。
やはり荷物を見渡して、「お荷物、多いですね。2トン車3台で人は4〜5人になると思います。」
そして、「ちなみに、本日は他社さんの訪問はあるんでしょうか?うちが最初ですか?それとも後のほうですか?」と静かに尋ねられました。
ギックーー!としたのを一生懸命顔に出さず、「え、ええ、まあ。あと2社さんほど…先というか後というかほにゃほにゃ△¥※$☆….」と答えると、何かを察したのか、
「そうですか、でしたらうちにチャンスをいただける可能性は少ないのかもしれませんが、でもお考えに入れていただけるなら」と、再び静かに出してくれた金額、さきほどのA社の半額をすこーし上回るぐらいの金額。
「えぇぇ!(安っっっっ)」
さっきと比べると、あまりの安さ。C社と大して差がないのです。
「いくら差があるっていったって、C社のような特殊なところは別として、大手は大手だもの、ある程度の範囲のところで上下する感じなんでしょ?」と思っていたこちらの予想を大きく下回る金額にぽかんとしてしまい、一瞬絶句してしまいました。
すると営業マン氏、その「えぇぇ!」を、「高いな、と思ってるな」と解釈したらしいのです。
次の瞬間、「ですよね、高いですよね。」と営業マン氏。
わたし「………。(とっさに何言っていいかわからない。)」
営業マン氏「わかりました。ではこの金額(さらに下がって、結局A社の半額)でいかがですか?あと、荷造りは全部ご自分でされますか?」
わたし「ほんとうは本棚とキッチンの荷造りがお願いできたらうれしいと思ってたので、お願いすると追加料金がどのくらいかというのも参考のために教えていただきたいです。」
営業マン氏「そうですか、では、このお値引きのお値段で、前日に本棚、キッチンの荷造りも一部荷造りでさせていただきます。」
わたし「!!!」(えぇぇーーー!これで一部荷造り込み?なんなのこの展開。)」
営業マン氏「いかがでしょうか?」
わたし「………。(もうパニック。)」
こちらがあまりにも黙ってしまったので、営業マン氏はおそらく必死で私の表情を読んだのだろうと思いますが、わたしがあまりにも複雑な顔をしていたのでしょうか、それ以上どう言葉をつなげていいか考えているふうでした。
そして、しばし沈黙。
わたしはやっと絞り出すようにお返事をしました。
「で、では、一旦こちらで検討しまして、のちほどお返事させていただきたいです。(っていっても、えーーーと、えーーーと、一体どうすれば???か、考えるから、おねがい、とりあえず帰って!わたしの前からいなくなって!)。」
「もちろん結構です。お電話いただけるのをお待ちしております。」
営業マン氏はどこまでも静かに、他社がどうだとか、ぐいぐい食い下がってくることもなく、あくまでも普通にさりげなく、あっさりお帰りになりました。
大変なことになりました。即、家族会議です。
というか、心はもうB社にお願いしたいのです。
金額が少々の違いで仕事が完璧なのなら、と思ってA社にしたはずでした。しかし、あまりにも金額が違い過ぎました。
ほぼ半額で荷造りもやってくれるっていってた。夜中に積み込みしないとテッペン越えるとかコワイことは言ってなかった。
B社も、A社同様、世間では知らない人はいない大手です。安いからと会社の信用にかかわるようなめちゃくちゃなことはするはずないもの。
ねーーーー。そうだよねーーーー。そうしよう。
でも、それにはA社をキャンセルしなくてはいけないのです。
……….どうしよう。
ということで、悩んだ末、やはりA社はキャンセルをお願いすることになりました。
すぐさま電話をかけ、「あのう、本当に申し訳ないのですが、さきほどの契約をキャ、キャンセルに…….。」
A社営業マン「えぇぇ!(さっき契約って言ってたのに)」
わたし「ほ、本当にすみません。よくしていただいた(し、小芝居までさせちゃった)のだけれど、どうしてもお願いできなくなってしまいました。」
断りの間じゅう、もう悪くて悪くて、生きた心地がしなかったのですが、それでも、平謝りし、やっとの思いでキャンセルをしました。
ほんとうにごめんなさい。
そしてB社に電話。
わたし「よろしくおねがいします。」
B社営業マン「えぇぇ!(可能性すっごい低いと思ってたのに)」
B社の営業マン氏はそれは喜んでくれました(っていうのも変なんですが)。
そして、電話の最後に「ご家族さまにもよろしくお伝えください。」と言われたのがとても印象的でした。
後になって、ほんのわずかなことだけど、こういうやりとりができる営業マンさんにお願いできてよかったと思いました。
こうして、お引越屋さんを決める一大事は、大雑把に要約すると、
わたし「えぇぇ!」
A社「えぇぇ!」
B社「えぇぇ!」
という展開の後、まるで一本ワンマンを終えたぐらいの疲労感をともなってとりあえず決定し、いよいよ引越当日へ向けて船は動き出したのであります。