忘れ物はないね?

『忘却』とは、忘れ去ることである。
人は『忘れる』という能力がなければ、絶望で生きていけないそうだ。
しかし、私にはそれらの忘れ物が大変愛おしく、また、そういった忘却の 中に存在する、私がかつて此処に存在していた証拠のかけらのようなものが、
どこか遠いところへでも散らばって、ある日ひょっと誰かのしゃっくりを止めたり
犬に遠ぼえをさせたりできないか、などと思うのである。
だから、私はこの日記を書くことにする。
この日記はその日にあった笑えることや、怒れることや、
その日に思い出した面白いことや悲しいことを記すためにある。どんどん忘れていくTwitterはコチラ

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2011年05月31日(火)

leteのライヴにお運びくださいましたみなさま、ほんとうにありがとうございました。
この日は台風!足元激悪!みなさんびしょ濡れになられたでしょう。ごめんなさい。
遠くや近くから、いつも来てくださる方、何十年もの時間を経て来てくださった方が駆けつけてくださってほんとうにうれしかった。
あちこちでそれぞれに時間も場所もまったくちがった形で出会った方々と、ひろーーーい宇宙の中のこの星の、この東京の、ある街のちいさな場所で時間を一緒に過ごせる、というのは、考えれば考えるほど不思議で面白くて、涙が出るほど愛おしくうれしいことであるなー、と思います。
人というのは生まれて死ぬ、というまったく止まらない生き物だから、そのまったく止まらない生き物が何十億といて、それらがそれぞれまったくちがう時を流動しながら過ごしているのだから、その無常である様は、なんと確信がなくて、なんと所在なく、なんと実体がなく、あてにもならないことか、と思うけれど、それなのに、そういうものものが、ある時ある場所で同じ瞬間を見たり聴いたり笑ったり感じたりっできるってことが、もうそれ自体奇跡なわけで、すれ違い、行き交い、違う断面で動いているすべてのものの中で、その欠片同士が、「またここで会いましょう」なんていって、また本当にここで会えるなんて、ほんとにすごいことだと思うのです。
そう思えばこそ、人は、「約束」なんていうもっとも頼りない合図も、「まだまだ捨てたもんじゃないぞ」と思っては、何度もするんだろうし、それこそが、この世を歩く醍醐味だと思うのです。

と、ああ、つい話が広がってしまいましたが、そういう愛おしい瞬間を一緒に過ごしてくださる人々と場所があって、私はとてもしあわせです。

それと同時に、その人や人や人や人がそれぞれのちがった場所と時にいても、その人々それぞれの時間の中や暮らしの中で、道を歩いていても、電車に乗っていても、お洗濯を干していても、窓にほおづえをついていても、勉強をしていても、手紙を書いていても、いつかどこかで会った人や顔や歌や声や話や溜息を、ふと浮かべて、気持ちがぎゅっとなったりふっくらしたりしていたらいいなあと思います。
そして私も私の出会っているたくさんの大事な人やモノや景色を浮かべては、私の歌や音楽もそういう人やモノや景色の雑念の一つになっていたいなあ、といつも思っています。
みなさん、本当にどうもありがとう。
心からありがとうございます。

[link:1256] 2011年07月06日(水) 23:10


2011年07月06日(水)

先日のサンジャック、見に来てくださったみなさまほんとにありがとうございました。
すっごく楽しくて終わるのもったいないなあ、なんて思いました。
多田さんのチャーミングな演奏スタイルとお人柄!
またすてきな方とご一緒できてうれしい限りです。
お客さまも、遠くから、ご近所から、いつも来てくださる方や、お久しぶりの方、はじめましての方がたくさんかけつけてくださって、中にはずうっとピアノの後ろで私の背中ばかり見るハメになっちゃった方もいらして、ほんとうに感謝の気持ちと、ごめんなさい、という気持ちです。
ライヴって、音もうたもおしゃべりもみな空気の振動で、目には見えないから、演奏するほうも聴いてくださるほうも関係なく、その場の見た目は「ただひとつの場になんだかんだと人々が集まっている」だけでしかないのに、あの人に会えた、この人とおしゃべりできた、またあの人が笑ってた、なんていう些細なことをお互いに受け取り合って、なんとなくうれしい気分になれる、という、これこそヒトの楽しみであろう、という楽しみが味わえる場所なんだなあ、と改めて思います。
そういう場を与えてもらえるっていうのは、なんとラッキーでうれしいことでしょうか。

サンジャックのピアノも楽しく鳴っていたし、平林さんの料理や心遣いもとてもすてきで、あの日のあの場でしかあり得なかったあの場を一緒に過ごしてくださったみなさまに心からお礼申し上げます。


[link:1257] 2011年07月29日(金) 22:43


2011年07月29日(金)生駒おたのしみ会 その一・帝国ホテルとだるま弁当

7月某日、午前8時40分。
朝の東京駅に、Pちゃんは金色の靴でやってきた。
今年も、恒例の珍旅行『Pちゃんとのおたのしみ会』がやってきたのだ。
今回、私たちが目をつけたのは奈良県生駒市。生駒駅前にある『ぴっくり(”びっくり”ではない)通り商店街』と
そこからケーブルカーで行く山頂の遊園地だ。
例によって事前の相談はとてつもなくざっくりしており、アクセスとかも適当に調べると大阪難波から近鉄で
生駒までサッと行けてしまうことがわかったので、とりあえず私が新大阪までの新幹線の切符を入手。
東京駅に朝8時40分ね!ということだけをとりあえず決めた。
そして、ホテルも適当に取っておくよ、と安請け合いしたのであった。
しかし、7月の夏休み突入直後の土日、思い立ったのが遅かったので、なかなかホテルは空いていない。
難波から行ったり来たりするのなら、難波周辺がよかろう、とホテルを検索すると、すぐに『大阪帝国ホテル』という
のが出て来た。
へえ、大阪の帝国ホテルって難波にあったんだ?と思って、どんなもんだろ、とサイトを見に行って見ると、…………うん?
なんだかどうも少し様子が違う。
帝国ホテルにしてはサイトの作りがカジュアル。そして、正面玄関の横に看板みたいなのが出てる。
そして値段がいやに安い。いや、安いのは歓迎なのだが、サイトに乗っている部屋のうち『JAPANESE』という和室スタイルのお部屋の写真を見て、完全に違和感を覚えた。
と思って、よくよく見直すと、トップページの『大阪帝国ホテル』と書かれた下に、ちっちゃーく「当ホテルは東京の帝国ホテル系列とは別になります」と!
えぇぇ?そんなことあるの?と思って、では本当の帝国ホテルの大阪支店(?)が確かあったはずだけど、それはなんていうのか?と思い調べると、そちらは『帝国ホテル大阪』なのであった。
『大阪帝国ホテル』と『帝国ホテル大阪』。
さすが商人の町大阪。誰も文句を言わず、両者共存してるようだ。
へえ、と感心したついでに、では、その帝国ホテル大阪のほうはどのぐらいの料金なのか、と思って見てみる。
すると、こちらもさすが商人の町、帝国ホテルといえど、状況次第で結構安いプランがある。土曜日に大人2名でスーペリアルなんとかというまどろっこしい部屋に泊まれてしまうのが、件の『大阪帝国ホテル』のツイン18,000円とあんまり変わらない。アクセスも都合よい。しかもどこも満室の土曜日なのに運良く空いている。しかし残り2室。
ということで、偶然に検索にひっかかった『帝国ホテル』という名の、別々のホテル2軒を比べただけだったが、
私の中では、もう完全に『帝国ホテル大阪』でいいよね!という気分になり、あっさり予約をしてしまった。
実はこの時点で、私はアクセスの勘違いをしていて、帝国ホテル大阪は近鉄で生駒から難波に帰ってくる途中の『桜ノ宮』という駅にある、と思い込んでいたのだが、『桜ノ宮』は鶴橋で JR環状線に乗り換えないと行けなかった。
(しかも、根本的に、『生駒』へは、東京からは『京都』経由で行ったほうが簡単で微妙に早く、料金も微妙に安かったことに私がまったく気がついていなかった。Pちゃんは京都経由で行くつもりでいたらしく、話が食い違っていることに前日に気がつく。)
けれども、まあ、大して困ることもなく前夜を迎え、Pちゃんに、待ち合わせ場所は去年飯坂温泉へ行った時に待ち合わせた中央コンコースにある『旨井門(ウマ イ モン と読む)』ね!いつもPちゃんがカツサンド買うとこね!と念を押す。
去年、待ち合わせ場所で落ち合えず右往左往した顛末が思い出され、その時の日記を読み直したりしてみると、なんと、あんなに一生懸命漢字まで説明した『旨井門』の『井』を間違えていたことが、今年になって発覚した。
正しいのは『囲』だったのだ(もうどっちでもいいが)。一瞬、自分の思い込みを棚にあげ、店が漢字をマイナーチェンジしたのかと思った(その根拠のない自信はどこから?)が、どう考えても私が去年間違えて覚えていたのだろう。ま、いいか。
で、その『旨囲門』から、今年も旅は始まった。
時間は冒頭に戻る(進む?)のである。
Pちゃんは金色の靴でやってきた。否、すでに待っていた。カツサンドも買って。
駆け寄った私に、開口一番、『ねえ、だるま弁当売ってたよ!だるま弁当買いなよ、ねえ、だるま弁当。』と言う。
え?だるま弁当?と見に行くと、なるほど、有名な高崎名物のだるま弁当だ。
中には、いろんな色の丸いものが詰められていて、瞬時に自分がそれを好きかそうでもないか判断できない。
その前に、その丸いものたちが何なのかもよくわからない。
しかし、だるまの形のケースは、食べた後、貯金箱になる、とたしかテレビでも見たことがある。
たしかにかわいい?というか、おもしろい。けども、どういうお弁当かよくわからない。
Pちゃんは自分はさっさとカツサンドを買ったくせになぜ私にこの群馬の駅弁を?
私が黙ってだるま弁当を見ていると、私の隣でもおばさんが、片手を差し出しながらだるま弁当を凝視しており(サンプルの写真で中身の丸いものが何か考えている様子)、おばさん買うかな?と思ったら手を引っ込めて向こうへ行ってしまった。
私もそこでつい勢いを削がれ、無言で考えているうち、もう新幹線の時間が迫ってきてしまったので、お茶だけを買って新大阪行きののぞみに乗った。
新大阪までは、3時間近くあったはずだが、何を喋っていたのかまったく思い出せない。
Pちゃんが金色の靴で登場したのは『そりゃ、大阪へ行くから』だそうで、トップスも、『一見きみどり色とオレンジ色のハデハデ柄だがよく見るとみかんと洋梨のフルーツ柄、という、大阪に負けないように計算されたスタイリングだ』だとか、『泥のように疲れてゴロゴロしていたお休みの日に、テレビで気持ち良さそうに背骨をのばしていたから、取り付かれたようにフラフラと買ってしまった通販の背骨のばしチェアは、やってみたら、背骨のラインに全く合わず、すごい苦痛だった』だとか、後から思い出そうにも、その二つぐらいしか思い出せないような、もう、とにかく完璧なまでの『ただのおばちゃんの雑談』しかしていなかったのだけど、新大阪までの3時間はサッと経ってしまった。幸せである。

そして新大阪で下車、地下鉄に乗り換えてなんばまで行き、そこから近鉄奈良線に。
若干複雑な経路だったが、まわりの人に聞きまくり、順調に進む。
そして、生駒に到着したのはお昼を回った12時半すぎだった。

つづく


[link:1259] 2011年08月07日(日) 00:14


2011年08月07日(日)こっちが足穂。(下のつづき)

月の表面の感じとか、見えますか。
最高。泣ける。

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[link:1261] 2011年08月07日(日) 01:58


2011年08月07日(日)モンクと足穂がやってきた

生駒おたのしみ会日記の途中ですが、あまりにもうれしいので、自慢日記です。
ついに、我が家にやってきました。
漫画家でブルースマン、そしてチッチ&クックのチッチの師匠でもある久住昌之さんの切り絵です。
展覧会で一目惚れしてから、紆余曲折を経てついに手元にやってきました。
久住さんは漫画も音楽も、そしてそのキャラクターも素晴らしいのですが、切り絵も本当に素晴らしくイカしていて、その作品が展覧会で壁にズラズラと並ぶと圧巻です。
数々の著名人を切った作品は、どれも抜群で、あれもイイ!これもイイ!と思ってしまうのですが、中でも、どうしても欲しかったのが、今回のモンクと足穂です。
この世、あの世に、尊敬して愛する音楽家は数多くいて、誰か一人、といわれても答えに困ってしまうのですが、三人答えろ、と言われたら、たぶん常にそのうちの一人はこの人を答えると思う、セロニアス・モンク。
そして、それと同じことを作家で聞かれたら、やはりこの人を答えると思う、稲垣足穂。

この二人の人物が、久住さんにかかると、もうまるでおんなじ町に住んでた知り合いを思い出して切ってるんじゃないか、ってぐらい、そのキャラクターごと、雰囲気ごと、見事に切り絵に表現されています。
例えばどんなに立派な人や気難しそうな人だって、人であるからにはどっかかんかちょっと「ぷっ」って笑えちゃうような一面があるはずで、久住さんの切り絵は、どんなにすごい人も、偏屈だったり変わり者なんだろうな、というような人でさえ、なんとなく見る人を「ぷっ」とさせるような一面を漂わせて額におさまっているのだ。
そして、モンクも足穂も実際会ったことないから、実はどのぐらいどんな人であったのか知らないはずなのに、「ふふ、やっぱりこういう人だったんだよね」という気分になって、ますます親しみが沸いてしまうのである。
不思議....。
本当にうれしい。大事にします。

そして、久住さんの先日リリースされたばかりのソロアルバム「MUSICOMIX」もすっごくよかった。
そのタイトル通りの内容は、そのまま久住さんというヒトを表している。
どんなに我慢しても、一曲通して笑わずに聴いていられる曲がない。
もともと、音楽はそうでなくちゃ、と私は思っているから、どうやってももニヤニヤしたり「ぷっ」となっちゃったりするってすごいことだ。
アレンジも演奏も最高にイカしているし、すごい曲もあるけど、最高にクールでかっこいいのに、かっこよければよいほど笑えてしまうし、ダイナミックであればあるほど笑えてしまうし、時々、切ない曲ですらあるのに、泣きそうになりながら、やっぱり笑えてしまう。
それは久住さんの描く漫画も、エッセイも、切り絵も、音楽も、ぜんぶ一緒だ。
ほんとにイカしています。大好きです。

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[link:1260] 2011年08月07日(日) 23:26

2003年6月16日までの日記


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