『忘却』とは、忘れ去ることである。
人は『忘れる』という能力がなければ、絶望で生きていけないそうだ。
しかし、私にはそれらの忘れ物が大変愛おしく、また、そういった忘却の
中に存在する、私がかつて此処に存在していた証拠のかけらのようなものが、
どこか遠いところへでも散らばって、ある日ひょっと誰かのしゃっくりを止めたり
犬に遠ぼえをさせたりできないか、などと思うのである。
だから、私はこの日記を書くことにする。
この日記はその日にあった笑えることや、怒れることや、
その日に思い出した面白いことや悲しいことを記すためにある。どんどん忘れていくTwitterはコチラ
[link:1238] 2010年10月05日(火) 00:05
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[link:1241] 2010年12月11日(土) 23:36
[link:1242] 2010年12月19日(日) 23:58
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共演の上野茂都さんの素晴らしき世界は、秋の夜長に明日のお天気のこと、今日の食卓のこと、などに思いをめぐらせながら聴くとさらに趣が倍増で、とてもよい夜でした。
あの、「ゆったり」と「するどさ」が一緒に存在する「上野時間」が大好きです。
試聴室その2、というところは線路の下にあるので、何をしていても、突然電車が通り過ぎ、それがなんともいえないよい感じがします。
きのうも歌っているとき、時折、ゴトトンゴトトンと電車がやってきては遠くへ過ぎてゆき、なんとなく、自分がこの音楽ごと、どこかの町へ運ばれていくような気持ちがしました。
いっそ、風船にくくりつけた手紙みたいにどこかへ運ばれて、知らない町のどこかのお部屋で本を読んだりしている知らない人のところへ私の妙な歌が届いたら面白いなあ、とか、ライヴが終わったら、あの場所ごと、知らない町に到着しちゃってたりしないかなあ、なんて思ったりしました。
とにかく、楽しい秋の夜でした。
遠くや近くからかけつけてくださったお客さまと、上野さん、永山さん、トバオさん、すべての皆さんに、どうもありがとうございました。
この日は仲良しの従姉が1歳半になるベイビーを連れて観に来てくれました。ベイビーといっても1歳半の女の子はもう小型のレディです。少し前までは男の人の顔を見ては泣いていたようですが、昨日はもうすっかり人懐っこいおしゃまさんに成長していて、にこにことご機嫌。ライヴも時々外に出たりしながら、とてもおりこうに楽しんでくれたようでした。
終演後、私がカズーを目の前で吹いてあげると、目をまん丸にして後ずさりした後、何度もアンコールしてすっかりお気に入りに。
でも汽笛の鳴る笛にはキョトーンと無反応で、「あれ?」と思いましたが、考えてみてハッとしました。汽笛を鳴らして走る汽車なんてこのあたりじゃまったく縁がありませんから、彼女は知ってるはずもありません。
あの「ポーーーッ」という音を聴いてすぐに「汽車」とわからない世代もワンサカいるんですよね。電話のベルだって、黒電話の「リリリリリーン」というのが、ぜんぜんリアルじゃない世代もうんといるわけだし、さらに同じ世代でも場所や状況によっても違うし、改めて「リアル」っていうのは個人個人独特のものなんだなあ、と実感します。
そして、音楽でも絵でも文章でも映像でも料理でも話でも、建築や生活道具やスタイル、日々の工夫に至るまで、そういう、いろんな人のそれぞれのリアルがガツーンと感じられるものがなにより面白いと思えます。古い時代とか今とか関係なくて、いつだろうとどこであろうと、その人がその時だからこそできたもの、というものにすごく興味があるし、ものすごく愛おしさを感じます。
しかしながら、ここで難しいのが、その、刻々と過ぎて行くリアルな一瞬を一つの形として記録に残す、ということで、少なくとも自分の中ではそのリアルをバッと切り取らないといけない、ということ。
いろいろな分野でいろいろな人々がそういう作業に成功してすばらしいものを世に残していて、そのすごさには感動する。
熱にうかされたように一瞬でババババッとできたものもあるだろうし、8年前に描いて、どうにもしっくり来なかったものに再び筆を入れてできた絵もあるかもしれない。3歳の時に繰り返し聴いた歌のグルーヴやハーモニーが自分の音楽に顔をのぞかせることもあると思う。その制作がその人にとって、かけるべき時間で、リアルな時間であれば密度は同じで、つまりは「その人時間」で一番リアルなものができたらいいな、と思うわけです。
昨日のライヴは、すべてアルバム未収録の曲ばかりにしてみました。
2005年におせっかいカレンダーを出してから、それ以降も新しい曲はけっこうできているのですが、ライヴでの「その時その時で消えていく形」が面白く、なかなかそれを形にとどめることができないでいました。
でも「それらをまとめる」、というふうには考えないことにして、今の私のリアルがうまく記録できたらいいな、と思いながら新しいアルバムのことをずっと考えています。
何かが切り取れればいいか、と思います。といっても一瞬ではできないんだけど。
そして28日、29日は札幌のみなさまにお目にかかります。
今まで加藤千晶のライヴを観ていただいたことのない方にも観ていただけたらうれしいです。