『忘却』とは、忘れ去ることである。
人は『忘れる』という能力がなければ、絶望で生きていけないそうだ。
しかし、私にはそれらの忘れ物が大変愛おしく、また、そういった忘却の
中に存在する、私がかつて此処に存在していた証拠のかけらのようなものが、
どこか遠いところへでも散らばって、ある日ひょっと誰かのしゃっくりを止めたり
犬に遠ぼえをさせたりできないか、などと思うのである。
だから、私はこの日記を書くことにする。
この日記はその日にあった笑えることや、怒れることや、
その日に思い出した面白いことや悲しいことを記すためにある。どんどん忘れていくTwitterはコチラ
[link:1119] 2009年06月10日(水) 01:52
駒込大観音へ水族館劇場の公演をみにゆく。
あいやー、テントの芝居を観るのは何年ぶりか。ちなみに私がはじめて野外でのテント芝居というものを観たのは、二十年以上前だ。名古屋の白川公園。少年王者舘に入る少し前の16歳ごろ、高校2年の初め頃だったと思う。観たのは夢一蔟という劇団の『仮面の火夫』というやつ。蛭子さんがチラシを描いていた。当時、天井桟敷(はテントじゃないけど)や曲馬館などをリアルタイムでは知らない私には、ものすごいカルチャーショックであった。ボーボー燃える火を片手に役者さんが上のほうの足場で歌ってる、などという、かなり特異な状況と、火薬とゴザと白粉の匂いが全部スモークにまじって各席に蔓延した時の、独特のテントの匂いが、強烈に私の嗅覚と臨場覚(なんて言葉ないけど)にひとつのジャンルを作った。それから数年にわたりテントもたくさん観たが(なぜか水族館劇場は今回まで観る機会がなかったけど)、テントに入るといつも同じ感覚に陥るのはあの匂いのせいだと思う。
そして今年、駒込大観音の境内で観た水族館劇場は、思っていたとおり、やっぱり本当にテント芝居だった。噂に聞いていた、舞台美術がとにかくすごい。真ん中に池があるし、上、下、中央全部のパーツがせり出し式の回り舞台だし(しかも2階建てだったりする)、ヒコーキが天井から降りてきたと思ったら人もちゃんと乗ってるし、奥で気球とかに乗って吊り上げられてるし、大噴水と滝が出て来るし。すごく面白かった。
がしかし、スモークの匂いが私の記憶にある匂いとまったくちがってたのはびっくりした。私が観ていた当時にはいくつかの違う芝居を観ても、スモークの匂いはだいたい同じ、または同じ傾向だった覚えがあるけど、今回はあきらかに匂いがちがっていた。水族館劇場のスモークの匂いが独特であったのか、私がテント芝居というものを何年も観ないうちに、スモークの種類が変わったのでしょうか?
しかしとにかく、そのせいもあって、今回は「これが2009年に観ている水族館劇場のテント芝居である」という感覚をハッキリ持つことができ、『変わっていく変わらないもの』、『変わらないが変わっているもの』という二つの極を感じることができました。
開演前に古書ほうろうの宮地さん、ミカコさんが屋台を出していて、念願だった、ミカコさん入魂の『萬福亭のチキンライス』を食べることができて、感激。チキンとパクチーが絶妙でおいしい!ガツガツと半分ぐらい食べてしまってから写真を撮り忘れたことに気がつく。シマッタ。