『忘却』とは、忘れ去ることである。
人は『忘れる』という能力がなければ、絶望で生きていけないそうだ。
しかし、私にはそれらの忘れ物が大変愛おしく、また、そういった忘却の
中に存在する、私がかつて此処に存在していた証拠のかけらのようなものが、
どこか遠いところへでも散らばって、ある日ひょっと誰かのしゃっくりを止めたり
犬に遠ぼえをさせたりできないか、などと思うのである。
だから、私はこの日記を書くことにする。
この日記はその日にあった笑えることや、怒れることや、
その日に思い出した面白いことや悲しいことを記すためにある。どんどん忘れていくTwitterはコチラ
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部屋の模様がえをしたので、これまでは本棚に向かってピアノを弾いていたのが、ベランダに向かうようになったので、ベランダの向こう側にある木にむかって弾いている。
ベランダに向かってピアノを弾いていると、鳥がくる。豆腐屋さんがくる。そして、大学堂がくる。
鳥は去年あたりからそのベランダの向こうの木にバサササとやってくる(たぶん山鳩?)。冬でも実がある木なのか、他にも木はあるのに、来るのは決まってその木だ。で、ワサワサと葉の中にもぐっているそれ向かって歌を歌うとあっけなくそいつは行ってしまうのだ。が、翌日また来るのである。
豆腐屋さんもくる。が、いつも猛スピードでやってきて『プー!トーフー!ブルルルル....』とまたとてつもなく素早く走り去ってしまうので、こちらも一瞬である。
一番の敵は大学堂だ。週に何度か、夕方になるとその木のあたりに『大学堂』の車はやってくる。来る時には遠くのほうから大音量で
『ブンブンチャカ♪ブンブンチャカ♪
ダイガクドウ♪ダイガクドウ♪やってきましたぁ〜ダイガクドウ♪
アイスクリ〜ムアイスクリ〜ムアイスクリ〜ムだよぉ♪
ホ〜〜ットドッグホ〜〜ットドッグホ〜〜ットドッグの
ダイダイダイダイダイガクドウ♪
お待たせしましたぁダイガクド〜♪』
という歌を流しながらやってくるのだけど、『あ、来た』と思う時にはもう木のあたりにいる。
大学堂はその歌のとおり、アイスクリームとホットドッグを売っている有名なピンクの車だが、どんなに真剣にこちらが曲に立ち向かっていようと、その時ばかりはどうしたってその歌には勝てないのだ。だって不意におじさんの能天気な歌がくるんだもん。
悔しいので一度ホ〜ットドッグとアイスクリ〜ムを買ってやろうと思うが、停車時間も短いので、買うこともなかなか難しい。
夕方はいろいろさわがしい。