『忘却』とは、忘れ去ることである。
人は『忘れる』という能力がなければ、絶望で生きていけないそうだ。
しかし、私にはそれらの忘れ物が大変愛おしく、また、そういった忘却の
中に存在する、私がかつて此処に存在していた証拠のかけらのようなものが、
どこか遠いところへでも散らばって、ある日ひょっと誰かのしゃっくりを止めたり
犬に遠ぼえをさせたりできないか、などと思うのである。
だから、私はこの日記を書くことにする。
この日記はその日にあった笑えることや、怒れることや、
その日に思い出した面白いことや悲しいことを記すためにある。どんどん忘れていくTwitterはコチラ
[link:1057] 2008年11月30日(日) 00:06
家の近くにあるとあるお家のまわりには、いつも夕方になると、そのお家の飼い猫とそのお友達が何匹か集まって井戸端会議ふうになっているのだが、その日は他の猫はいないようで、その茶縞の猫は薬局の看板の下に向こうをむいてうずくまっていた。そいつは以前、みっしりときれいに刈り込まれてマットレスのように見える歩道の低い植え込みの上にむっちり埋まって動けなくなっていたアホな猫だったが、いくらアホとはいえ、たいていは後ろをむいていてもヒトが近づくとさっと気がついて向こうへ行ってしまうので、私もあんまり気をつかわないでスタスタとその茶縞のほうへ歩いていった。しかし、かなり近くまでいってもぜんぜん動かない。
で、あれ?今日は逃げないな、ひょっとして馴れた?と思った次の瞬間である。
茶縞が突如私に気がつき(遅っ)、マンガのように『ぎくっっっっ!!』と飛び上がり、その拍子に看板に『ガンッ』と思いっきり頭をぶつけた。『痛っっっ!』思わず叫ぶ私。
というか、やっぱりアホだ、こいつ......。
茶縞は、もーんのすごーくバツが悪そうな顔でさささーと向こうへ行き、植え込みの陰からこちらを見ている。頭はまだかなり痛いはず。いやいやいや、ごめんごめん。驚かせるつもりなんかぜんぜんなかったんだけど。てっきりもう気がついてると思ってたし。
それにしても、ありえん。機敏のきの字もない。
猫ってふつう細い塀の上や狭い隙間もスイスイ行けちゃうとか、高いところから落ちても機敏に着地するとか、自分の体と外界とのバランスをとるのが抜群のはずじゃ?アンタあの頭の打ち方はあまりにもアホすぎやで〜。こっちがびっくりするわ!と思わず関西弁で茶縞をツッコミながらフと横を見ると、向こうの陰にブチ猫がもう一匹こちらを見ている。
そうかそうか、茶縞はこのカワイコちゃんに一心不乱に見とれてて私に気もつかなければ、自分が看板の下にうずくまっていたことも忘れちゃってたのである。
プププププ!さらにアホだ!
頭痛かっただろうなあ。しかしこれからも茶縞から目が離せない。